摘要: |
ジャパン·アズ·ナンバーワンが喧伝された1980年代の初頭,石油危機を克服した日本経済は,高度成長期に比べれば成長率こそ落ちたものの,世界第2位の経済大国となり,貿易面でァメリカを脅かすほどの地位にあった。ところが,例外的な失敗と考えられたものの一つに国鉄問題があった。1970年代にはスト権ストなどで利用者に大きな不便を強いるなど現場の乱れが目につき,毎年の赤字が解消される見通しもないのに,新線の建設を求める声はやまないという状況もあり,政府にとって大きな課題として認識されていた。その問題に決着をつけたのは,いわゆる第二臨調による行政改革の一環として実施された国鉄民営化である。鉄道路線の多くが維持されたうえ,中核となる本州3社の経営状況がよく,職場規律も向上し,例外はあるものの特に安全性が低下することもなく,むしろ多くの利用者にとっては利便性が向上することが多かったことから,この改革は「成功した改革」として理解されている。そして,その影響は単に鉄道分野や,交通分野にとどまらない。そこで,本稿では,民営化を軸とする国鉄改革の概要を振り返ったうえで,焦点となる論点をいくつか取り上げ,政治的に見た国鉄改革の意味を考えてみたい。 |