摘要: |
財務省は、今期·令和4年度実施の「予算執行調査」に関して10月7日に2回目の結果公表を行った。本年3月に調査対象事案39件を選定し、7月26日付で既に34件について調査結果を公表した。今回は、残り5件に関する結果公表である。当該調査は、「母屋でお粥をすすつているときに、離れですき焼きを食べている」と、特別会計の杜撰な実態、行政の不作為に対する痛烈な揶揄を発した「塩爺」こと当時の塩川財務大臣(在任2001年4月〜03年9月)が創設した歳出改革である。会計検査院による査定監査とは別に財務省主計局が執行現場に近い地方財務局とともに財政資金の効率的·効果的活用を目的として、平成14(2002)年度以来、毎年実施しているものである。調査結果は決算内容や国会議決、検査院による決算検査報告書などと共にPDCAサイクルに基づき次期予算編成等に反映する仕組みとなっている。その反映状況は政府予算案が固まる12月下旬以降、通常は1月に公表される。令和3年度に関しては、過年度実施の追跡調査を含む全39事案について、それぞれ見直しや審査基準の厳格化、事業廃止·枠組み新設などを施し、39件中14件に関連して90.2億円の予算削減が図られた。加えて、令和元年度及び同2年度の調査事案、計86件のうち9件に関しても令和4年度予算に改めて反映した結果、更に22.5億円の削減を図っている。今回の結果公表5件には本年1月27日から急遽実施されて今年度も継続中の経産省所轄の「燃料油価格激変緩和対策事業」(昨年度予備費使用額4,472億円。本年度補正予算額1兆1,655億円、7月までの使用額2,774億円。事業運営事務局:博報堂)が含まれており、本件に関しては本欄3月号で指摘した筆者の懸念が現実となつた。燃油小売事業者(SS)294事業者(本年4月時点のSS店舗数24,315の1.2%相当)を対象とした書面および聞き取り調査の公表結果によれば、販売価格について回答した155のSSのうち補助金全額分の「抑制が出来ている」と回答したのは半分以下、約45%相当の70のSSだけ。残り過半となる85のSSは、「全額分は抑制されていない」(36のSS/23.2%)もしくは「分からない」(49のSS/31.6%)とした。また補助金全額を販売価格に転嫁していない理由のうち約8割相当の64のSSは「近隣店舗の巿況を見て判断した」とした。補助金額と抑制額の乖離金額を、元売事業者のガソリン販売実績量(3〜7月分)を基に推計したところガソリン分だけでも110億円超の無駄が発生したと評されている。しかし、実態は確認されていない。本件総括調査票の「④今後の改善点·検討の方向性」欄には「SSに対する趣旨の周知徹底を行い、全額の転嫁を促すべきである」と「等閑な」コメントが記されているが、同事業を所轄する経産省(資源エネルギー庁)は例に違わず運営を民間に丸投げしており、状況改善の具体的妙案があるのか否かについては、極めて疑わしい。 |