摘要: |
2023年の夏もわが国では各地で大雨に見舞われ,秋田県などでも浸水被害が発生した。このような激甚災害の増加の主要因は地球温暖化であり,それを引き起こすのが温室効果ガス(Greenhouse Gas : GHG)であることは明白になっている。2015年のパリ協定では平均気温上昇を工業化以前に比べて213より十分低く保つとともに,1.5℃ に抑える努力を追求することが決議された。また,国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change : IPCC)は2018年10月に『1.5℃特別報告書(Global Warming of 1.5℃)』を公開し,世界的にカーボンニュートラルが加速し始めた。わが国も一歩遅れで,2020年10月の菅総理所信演説で「2050年カーボンニュートラル」が宣言され,世界の潮流の仲間入りを果たした。その後,2021年4月のバイデン大統領主催の気候サミットに向けてわが国は目標値の引き上げを余儀なくされ,2030年削減目標は,2013年度比26%削減が46%削減となつた。ちなみに,CAT (Climate Action Tracker)はこの値を「政策的にはInsufficient」と評価しており,その実現には多くの課題を残している。いずれにせよ,2023年3月発行のIPCC第6次評価報告書は,「人間の影響が大気,海洋,及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない(unequivocally) 」と明言しており,カーボンニュートラル2050の必要性が認識された。 |