摘要: |
世界保健機関(WHO)は2018年、世界の14億人が運動不足で、糖尿病や心血管疾患、がん、認知症などの危険性が高まっているとの調査結果を発表した。日本でも、米英に比べると改善傾向にあるものの、成人の3人に1人以上が運動不足の状況にあるとの報告もみられる。これらの背景には、先進国では座ったまま過ごす生活が定着して、レクリエーションや交通でも、あまり体を動かす機会がなくなったためといわれており、国として、ウォーキングゃサイクリングなどの運動に積極的に取り組める環境づくりが必要だと指摘されている。これらのことからWHOは、2018年6月に「運動推進グローバル行動計画2018-2030」(WHO Global Action Plan on Physical Activity 2018-2030)を立ち上げ、わが国でも、国土交通省が「居心地が良く歩きたくなる」空間づくりを促進し、魅力的なまちづくり(ウォーカブル·シティ)を推進している。歩くことが人間の健康にさまざまな効果をもたらすことが多くの研究によって証明されており、魅力的なまちには多様な人々が集まり、交流し、多様な活動を繰り広げることで都市が活性化され、持続可能な都市の構築にもつながると考えられている。近年の活動量計等の健康機器の廉価化や、これらを含むスマートフォンやウェアラブル端末の普及に伴い、手軽に個人のデータを長期的に取得することも可能となった。これらのデータを活用した運動器機能障害の早期発見や進行予防に関するアプリケーション、歩行時の負担軽減や歩行に課題を持つ障がい児の歩行能力を維持·向上するためのアシスト装置なども開発されている。そんな中、2019年末から続くコロナ禍は、全ての人々の生活に及ぶ未曾有の大災害となり、新しい生活様式による行動制限の下で、いかに健康·安全を維持していくか、これからの時代の大きな課題となった。 |